蔭山樓の公式サイトのコンセプトページで公開された写真。白い皿に盛ったフカヒレの姿煮に、上からとろみのあるスープが注がれている
蔭山樓の公式サイトで、鶏白湯で煮込む姿煮を説明する段落に添えられた写真 画像引用: 株式会社自由が丘蔭山樓/記事が sources で明示している公式サイト
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白湯の一皿と一杯 ― 蔭山樓 自由が丘店の2009年

広東料理では清湯で仕上げるフカヒレを、筑紫樓は白湯で仕上げていた。その違いに衝撃を受けた料理人が、2009年、自由が丘の駅から少し離れたビルの1階に蔭山樓を開く。

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澄んだスープではなく、白いスープで

ホテルで広東料理を学んできた料理人にとって、フカヒレは清湯スープで仕上げるものだった。ところが四川料理の「筑紫樓」では、同じフカヒレを白湯スープで仕上げていた。

のちに自由が丘で蔭山樓を開くこの料理人は、その違いに衝撃を受けた。高松で調理師学校の講師も務めていた頃、そこの卒業生が東京の筑紫樓で働くことになり、その縁から料理長の席が回ってきた。34歳のときのことだ。筑紫樓で学んだフカヒレ料理は、のちにこの人の大きな武器になる。

中華を離れた時期

2004年、料理人は自ら立ち上げた店を辞め、ラーメン店を始める。中華の料理長からラーメンへ。

この時期の言葉が、ひとつ残っている。

「美味いんだけど、これ何かに似ているな」

答えはすぐに出た。「『筑紫樓』のフカヒレの白湯スープだ!」。筑紫樓で散々作ってきたフカヒレのスープも白湯。白湯同士、似ていて不思議はない。

やがて、味には自信のある鶏白湯のラーメンができあがる。それでも経営はうまくいかなかった。「いよいよ崖っぷち」という状況だった。

「あの頃の『筑紫樓』の味を」

窮地を救ったのは、人との出会いだった。知り合った人が、たまたま料理長時代の筑紫樓に食べに来ていた客だった。その人から打診がある。

「あの頃の『筑紫樓』の味を出せないか?」

その人は自由が丘にビルを持っていた。1階をテナントとして貸す。店への出資もする。料理人は再び中華料理の世界に戻ることを条件に、この話を受けた。

2009年、自由が丘に蔭山樓が開く。運営会社の名は株式会社自由が丘蔭山樓で、設立も同じ2009年。社名の頭に、街の名が置かれている。

立地に恵まれなかった最初の時期

場所は駅から少し離れていた。過去5年で5軒の店が入れ替わったほどで、決して恵まれた立地ではなかった。開店当初は客が入らず苦戦した。

転機はテレビで取り上げられたことだった。その後は「徐々にお客さんが増えていきました」と、取材記事は伝えている。

鶏白湯で煮込む姿煮

鶏白湯のスープで丹念に煮込んだフカヒレの姿煮。店はこれを「蔭山樓の誇る伝統的な一品」と呼ぶ。店の説明によれば、濃厚ながら滑らかなスープが、フカヒレの独特な旨みを引き立てる。使うのは、厳選した太い繊維のフカヒレだ。

その鶏白湯は、手羽先を中心に約8時間炊き上げる。骨から引き出した深い旨味に、肉の自然な甘み。店はこれをクリーミーでマイルドな口当たりのスープと説明している。

蔭山樓の公式サイトのコンセプトページで公開された写真。黒い背景で、片手鍋から白い器へ白濁した鶏白湯スープが注がれ、湯気が立っている
蔭山樓の公式サイトで、手羽先を中心に約8時間炊く鶏白湯を説明する段落に添えられた写真 画像引用: 株式会社自由が丘蔭山樓/公式サイト

店の言葉では、この鶏白湯は「フカヒレ専門店ならではの特製スープ」として産み出されたものだ。そしてラーメンにもなる。合わせるのは浅草開化楼特製の中太縮れ麺で、コシのある麺が濃厚な鶏白湯を絡め取る、と店は紹介する。

ラーメン店の時代、何かに似ていると気づいた味は、筑紫樓のフカヒレの白湯スープだった。この店の話をたどると、フカヒレと白湯という二つの言葉が、何度も顔を出す。

自由が丘店限定のコースには、「本日の彩り蒸し野菜」「フカヒレの姿煮(28g)」「こだわり麺」が入る。蒸篭でふんわり蒸した野菜も、蔭山樓が並べる料理のひとつだ。掲げるコンセプトは「フカヒレの贅沢を少しだけ日常に」。

食べログに掲載されたメニュー (2026年8月更新) では、単品の姿煮は大きさで価格が分かれる。

姿煮の大きさ価格 (税込)
小 (約90g)8,800円
中 (約200g)27,280円
特大 (約320g)38,280円

店の基本情報

項目内容
店名蔭山樓 自由が丘店
住所東京都目黒区自由が丘2-8-21
昼1部11:00〜12:45
昼2部13:00〜15:00
夜17:00〜22:00 (L.O 21:00)
定休日年末年始のみ

営業時間は公式サイトの店舗情報によるもので、掲載先によって表記に違いがある。最新の情報は店舗で確かめられる。

街の名を冠して

蔭山樓は主に都内で店舗を展開し、鶏白湯ラーメン専門店「鶏白湯らーめん自由が丘蔭山」は、2024年12月の公式発表でフードコート等を含めて10店舗だった。一方、自由が丘店は、フカヒレを使ったフレンチスタイルの料理を落ち着いた店内で味わうフカヒレレストランで、店はここを「フラグシップ店舗」と位置づけている。

蔭山樓の公式サイトの店舗一覧で、自由が丘店の紹介欄に掲載された写真。黒い器に入ったフカヒレのスープ料理で、ブロッコリーが添えられ、湯気が立っている
蔭山樓の公式サイトの店舗一覧で、自由が丘店 (フカヒレレストラン) の紹介欄に掲載された料理写真 画像引用: 株式会社自由が丘蔭山樓/公式サイト

2009年に自由が丘で開いてから、2026年で17年になる。駅から少し離れたこの店の前を次に通るとき、その店名には、ここまでの道のりが重なって見える。