亀屋万年堂、自由が丘に 88 年 ― ナボナと総本店と、9 月 25 日の団子
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亀屋万年堂、自由が丘に 88 年 ― ナボナと総本店と、9 月 25 日の団子

先週書いた 9 月 25 日の月見団子の背後に、88 年の時間軸がある。亀屋万年堂の創業は 1938 年 12 月 18 日、場所は東京・自由が丘。1963 年にナボナを世に出し、総本店は今も目黒区自由が丘 2-11-5 に立つ。88 年目の秋、その 1 日限定の団子が棚に並ぶ。

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先週の団子の背後にあるもの

9 月 25 日、亀屋万年堂の自由が丘総本店に月見団子が並ぶ。1 日限定、15 個セットで 1,971 円。旧暦 8 月 15 日、中秋の名月に合わせて、その日だけ棚に降りてくる。

先週その一報を短く書いた。書き終えて、あとから気づいたことがある。この店が自由が丘で菓子を作り続けている時間は、88 年ある。

1938 年 12 月、自由が丘で

会社概要には「設立 1938 年 12 月」「創業 昭和 13 年 12 月 18 日」と並ぶ。代表商品の紹介文には「昭和 13 年に東京・自由が丘の地で創業して以来、お客様に親しまれるお菓子作りをモットーに、地域の皆様と共に歩んで参りました」とある。

昭和 13 年 12 月 18 日。1938 年。この街のいまの姿を知る人にとっては、想像の外にある年代だ。マリ・クレール通りの名も、駅前ロータリーのいまの形も、まだない。その年の 12 月、自由が丘で菓子屋が一軒始まった。今年で 88 年目になる。

1963 年、ナボナが街の甘さになった

創業から 25 年後、1963 年に発売されたのがナボナだ。会社概要はこう記す。「昭和 38 年には王貞治氏の CM でおなじみの『お菓子のホームラン王・ナボナ』を発売」。伝統を大切にする和の佳き心と、現代風の好みに合わせた洋のセンスが織りなす当社の代表商品、と続く。

ナボナは今も棚にある。通年商品はチーズ味とゴールドパイン味の 2 種類。1 個 172 円から始まり、4 個入り 760 円、6 個入り 1,188 円、9 個入り 1,728 円、12 個入り 2,268 円、18 個入り 3,348 円、27 個入り 5,000 円まで、箱の刻みが並ぶ。特定原材料は卵、乳、小麦。夏には、この 2 種に加えてブラッドオレンジが並んだ。2026 年は 4 月 14 日から販売が始まった。そして 8 月 20 日からは秋の栗が加わり、9 月下旬頃まで続く。この 63 年、店は季節ごとに棚の色を静かに切り替えてきた。

「お菓子のホームラン王・ナボナ」の CM が流れた 1963 年から、今年で 63 年になる。その 63 年のあいだ、通年 2 種の棚と季節の切り替えという呼吸を、店は同じ場所で繰り返してきた。街の甘さの一部として沈殿している時間だ。

その「同じ場所」は、目黒区自由が丘 2-11-5。営業時間は 9 時から 20 時。会社としてはいま横浜市都筑区に本社と工場を置き、社員は 390 人、東京・神奈川に 14 店舗を持つ。それでも「総本店」は自由が丘に残っている。88 年前に始まった場所と、いま看板が立っている場所が同じであるということ。

朝 9 時から夜 8 時まで、11 時間、扉が開いている。その 11 時間が 88 年ぶん積み重なってきた。この住所に、この時間帯に、この店があること自体が、街の座標のひとつになっている。

88 年目の秋

2026 年 9 月 7 日 23 時 41 分、白露に入った。9 月 23 日 9 時 05 分に太陽黄経が 180 度に達して、秋分になる。国立天文台暦計算室の暦要項がそう告げている。そしてその 2 日後、9 月 25 日、旧暦 8 月 15 日の中秋の名月。自由が丘経済新聞は、その日に合わせて総本店で月見団子が同日限定販売されると伝えている。

その 9 月 25 日、朝 9 時から夜 8 時まで、総本店で月見団子が売られる。1,971 円、15 個セット。月に見立てた黄団子が 1 個、白団子が 14 個。国産うるち米粉の団子に、みたらしダレと、北海道産小豆のこしあんが添えられる。紙製の外箱は組み立てると三方の形になり、購入者にはススキのドライフラワーが添えられる。事前予約もできる。前日 9 月 24 日と当日 25 日には餡入り団子 6 個 648 円も並び、9 月 17 日から 25 日にかけては「うさぎ薯蕷饅頭」194 円が期間販売される。

1938 年の 12 月に始まった店の 88 年目に、この 1 日がある。日付が動くのは旧暦の側で、店は毎年その日に合わせて団子を作る。88 回目に近づいてゆく、この繰り返し。

次にこの前を通る時

ナボナのケースの並びも、月見団子の三方の紙箱も、9:00 から 20:00 の営業時間も、全部、1938 年 12 月 18 日から続いている 1 本の線の上にある。

次にこの前を通る時、少し立ち止まってみよう。88 年前、ここで菓子屋が一軒始まった。