「1998年4月、自由が丘に開いた1軒 ─ ピープルツリーが街に立ち続けた時間」
1998年4月、自由が丘3-7-2に1軒の店が開いた。名前は当時「ザ・フェアトレード・カンパニー」。 2000年に「ピープルツリー」と改まり、看板と通販カタログの名前が揃った。 28年経ったいまも、日本で1店だけの直営店として、この住所にある。
この住所に至るまでの7年
自由が丘3-7-2。いま「ピープルツリー自由が丘店」の看板が下がっている場所に、 1998年4月、1軒の店が開いた。当時の名前は「ザ・フェアトレード・カンパニー」。 運営していたのは、1995年1月に法人化されたフェアトレードカンパニー株式会社だった。
店の名前が現在の「ピープルツリー」に変わったのは2000年2月。ブランド名の統一に合わせて、 直営店と通販カタログの名前が同じ「ピープルツリー」に揃えられた。
同じ住所に、同じ会社が運営する、同じ看板が下がっている ─ その状態がいま28年目を数える。 ピープルツリーは全国に取り扱い店とイベント販売を持つが、直営店は自由が丘のこの1店だけ。 日本で1店だけの直営店が、開いた場所から動いていない。
この 1998 年の店を語るには、その 7 年前まで遡る必要がある。 1991 年、環境と国際協力を掲げる NGO「グローバル・ヴィレッジ」が発足。 1993 年、その活動のなかで創立者がバングラデシュを訪ね、フェアトレード商品の開発が始まった。 1995 年 1 月、事業部門が「フェアトレードカンパニー株式会社」として法人化。 1998 年 4 月、直営店が自由が丘に開いた ─ という順序になる。
NGO の発足から数えれば 7 年、法人化からは 3 年。その積み重ねが「店を持つ」という形に変わった場所が、 自由が丘だった。
街との時間
2007年12月。冬至の夜に合わせて、日没後の店内をキャンドルの明かりだけで営業する 「キャンドルナイトWeek!」が始まった。12月19日から25日までの期間限定で、 省エネや電気の使い方を考える時間に、この店の店内が使われた。 22日にはインストアライブとフェアトレードクイズが行われている。
2013年5月には、世界フェアトレード・デー(毎年5月第2土曜、WFTO加盟の世界70カ国約350団体が 参加する日)の関連イベントが開かれた。この日、日本国内では1999年からピープルツリーと 母体NGOグローバル・ヴィレッジの呼びかけで催しが続いており、2013年で15周年の節目だった。 15周年を迎えるための場所として、自由が丘の店がホストになった。
省エネの話も、フェアトレードの話も、店の外から発信されて店に集まるのではなく、 この店の内側から街に広がっていった。
商品の顔 (2016年時点として)
商品ラインの手触りは、2016年に外部メディアが記事にした時点のものが残っている。 以下は2016年時点の記述で、現在の商品構成とは異なる場合がある。
その時点でロングセラーだったのは、レギュラーチョコレートだった。当時「販売21年目」、 ココアバターを使い、秋冬限定販売、1個350円。パッケージ裏の「カカオポイント」を10個集めると、 生産者に苗木1本が贈られる仕組みが付いていた。同じ2016年、乳製品を使わない 「ベジ仕様チョコレート」(ココナッツミルク・ザクロ・オーガニックビター) が加わっている。
フィリピン産のドライマンゴーは、その時点で「20年以上のロングセラー」と紹介されていた。 農薬・化学肥料不使用。オーガニックのフレーバーティーはバイオダイナミック農法で、 ティーバッグはトウモロコシ由来の完全分解可能素材だった。
2016年当時の記事に並んでいたのは、こうした「品物ひとつずつに、作り手と作られた場所が付いている」 という手触りを示すスペックだった。
2026年、いまの店
営業時間は11:00〜19:00、水曜定休 (祝日の場合は翌日に振替)。 店内ではウエディングドレスの試着、ラッピング相談、授乳室の利用ができる。 「フェアトレードの学校」も開かれている。
2026年秋のイベント案内には、9月19日(土)のソーラーランタン ワークショップ (南アフリカ製ソネングラスを使う、料金5,970円、9月15日火まで要予約) と、 9月から12月まで月1回の日曜朝ヨガ (9:45-10:45、2,000円、ヨガマットレンタル別途500円、 参加者に500円店舗クーポン付き) が並んでいる。
服と食べものが並ぶ店の棚の外側に、朝の体を動かす時間や、夜の光を作る時間が置かれている。 店を「物を買う場所」の定義から少しずらす仕掛けが、月ごとの予定表として続いている。
デザインの街の、名前のある買い物
自由が丘は「デザインの街」と呼ばれることが多い。その街の3-7-2に、 「作った人の名前が付いている買い物」ができる店が28年間ある、というのが、この記事で書き残しておきたかったことだ。
1991年のNGO発足から数えれば35年、1998年の店開きから数えれば28年。 次に自由が丘3-7-2の前を通る時、看板の下にある年月をひとつ思い出したい。