「同じ番地、同じベーグルの香り、しかし焦点は農家と土へ ——奥沢7-2-9、better is」
奥沢7-2-9。1998年12月から27年、この番地でベーグルが焼かれ続けてきた。前身JUNO CAFEは2025年末に休業。7月7日、同じ場所に開いたカフェ&デリ「better is」も看板にベーグル。ただし焦点は変わった——千葉・山武の農家、店外の菜園、コンポスト、廃棄野菜の循環。
27年、同じ番地で焼かれ続けた
奥沢7-2-9、自由が丘駅正面口から徒歩4分。この番地でベーグルの香りが立ち始めたのは1998年12月。プラントベースカフェとベーグルの店「JUNO CAFE JIYUGAOKA」だった。2019年にリニューアル、2024年4月に休業して6月に営業再開。2025年12月25日、公式サイトに休業のお知らせが出て、営業再開は未定のまま年を越した。
そして2026年7月7日、同じ扉の内側に、カフェ&デリ「better is (ベターイズ)」が開いた。看板にはベーグル。香りも残る。焦点だけが、少し向きを変えた。
農家の名前を、店で呼ぶ
better is は「megukuru」というブランドのフラグシップ店にあたる。運営はシーエヌシー株式会社(東京都品川区)。
野菜は千葉・山武市の「たがやす倶楽部」から、市場を通さず定期的に届く。じゃがいも、ケール、にんじん、玉ねぎ。プレスリリースには「エシカル認証」農家の紹介、と主体を明示して書かれている。仕入れではなく、紹介。産地の顔が、食卓の向こう側に立つ構図だ。
店の外に畑、店の中に堆肥
店の取り組みは、番地の内側で循環する。店外の庭で野菜とハーブを育てる。厨房から出る生ごみは「megukuru コンポストプロジェクト」で堆肥化。廃棄になりかけた野菜は「発酵野菜ドレッシング」へアップサイクル。さらに、倉中るなさんが、廃棄野菜と農園の土から絵具を作るアートプロジェクトも動く。食から出たものが、食を彩る素材に戻る。
子ども向けの食農体験ワークショップと、マルシェトークイベントも予定されている。食べる場所であり、食を学ぶ場所でもある。一つの店舗の中で、栽培・調理・廃棄・再利用・教育が閉じる構造だ。
卓上に並ぶもの
イートインの中心は「整うデリボウル」1,408円。自家製塩麹チキンのサラダは1,650円。飲み物は「畑のスムージー」各770円、キャラメルチーズケーキ715円。テイクアウトは、本日の総菜の量り売りが410円から、和風葉物サラダベースが205円から。先代から続く系譜としてベーグル8種が302円から。にんじんジュース626円。
44席、白を基調にした空間。注文はタッチパネル発券機。世田谷情報ナビの現地レビューでは、平日昼間は落ち着いた入りだったと記されている。
奥沢7-2-9、次の27年へ
同じ番地に、同じ香り。ただ、その香りが指す先は変わった。かつては「プラントベース」という食のスタイル。今は、農家の名前、店外の畑、堆肥の桶、絵具になった土。食卓の一皿の背景にある工程を、店ごと編集する試みだ。
次にこの番地の前を通ったら、店の外の菜園を覗いてみたい。ケールがどこまで伸びているか。